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院長ブログ

山里の訪問診療2019初秋①


秋だし、 雨があまりに続くとセンチになります。

私が父の後を継ぎ、ここで16年が経ちました。

たくさんの方々をお診取りし、未曾有の災害も経験しました。

医師が"死"に立ち会う数は、一般の方々とは比にならない程多いでしょうが、その中でも私が、"死"に立ち会った数は群を抜いてるかもしれません。 父の死も含めて。

今、ここに慢性腎不全で、余命半年と言われた90代のおばあちゃんがいます。 大病院から私の元に戻り、1年半が経過しました。私がここに帰って来た16年前は独居で、それでも、強く逞しく生き、杖で徒歩通院されていました。

今は施設入所。恐らく高アンモニア血症によると思われる諸症状や心不全が主で、施設管理下、特に積極的な加療はしていません。もちろん、通常の意識も低下。毎日、介助で食事をし、誤嚥予防に日中はソファに座っているだけです。ただ、漠然と無表情に。

が、このおばあちゃん。 私にだけ、反応してくれるんです。 笑顔で。

IPS細胞が失明を救う最新医学の進歩の中、ここでは、クスリや治療とは違う、なんとも説明し難い人間の"煩悩"が、不思議に人を然るべき運命に導いているのかもしれません。

人は人の死を経験すればするほど、"煩悩の力"を身につけるのかな。。 知らず知らずと私、 優しくなりました。(と、思います。笑)

40代、獅子の時代、人は診ず、病気を診ていた時代を越えて、今は冷静に時代や事象や自分を受け入れることが出来るようになった今、父がやっていた、私の診療所がやってきた"人を診る"医療。

多分それは間違えではないから、 ばあちゃんの笑顔を見て、なぜか涙が溢れます。

おばあちゃん、 亡くなるのは、そう先のことではないと思います。恐らく、突然に。。 しかしながら、たった週一回だけど、私を見て、笑顔になってくれるのなら、ずっとずっと生きて欲しい。

医師としてでなく、「診送る人間」として。

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